食文化の継承
大切にしたい郷土の味「つるおかおうち御膳」を学ぶ講座
鶴岡の各地で母から子へ代々と受け継がれてきた郷土料理。
かつては家庭や地域の行事などの中で自然とリレーしていくことが出来ていました。
現在は、生活スタイルが変化し、家庭料理もグローバル化している中で、郷土料理を伝承する機会、食べる機会も少なくなってしまっているのが現状です。
あたりまえのようにこの土地に根付いていた郷土料理を、これからの世代に繋いでいくきっかけをつくる場として、今回この年間講座を企画しました。
第6講 大切に受け継がれてきた地域の行事食(黒川)
櫛引地域黒川地区で500余年も続く黒川能(国の重要無形民俗文化財)。男衆が表舞台で伝統芸能を守り継ぐ裏で祭の最中の台所を支えるお母さん達に地域で食を伝承する大切さについて学びました。このページでは料理の一部を紹介します。
(開催日:2019.12.1)
【講師 秋山かおるさんからのお話】
黒川能は鎮守春日神社の氏子によって神様に奉納されるものとして代々受け継がれてきた伝統芸能で、氏子は神社を境に上座・下座に分かれています。役者を務めるのは男衆で上座・下座それぞれが競い合いながら継承してきた背景があります。2月1日・2日に行われる「王祇祭」が神事として奉納されるものの中で最も重要なお祭りで、その際には、行事食としてこの地域独自に発展してきたごっつぉが振舞われます。芸能として上座・下座で競い合ってきたのと同じように、振舞われるごっつぉもまた上・下で味付けや盛り付け方、食べ方などが異なるのが大きな特徴です。こうやって競い合いながらやってきたからこそ、能も行事食も長く継承されてきたんだなぁとつくづく思います。今は若手が少なく、継承するのも難しくなっていますが、黒川能と同様に行事食も続けていけるように地域で取り組んでいます。
黒川能について学ぶ
本番の祭のエピソードを聞きながら
赤こごみを細かく刻む(きりあえ)
もだしとほたてのすまし汁
「もだしとほたてのすまし汁」
【材料】
☆ほたて
☆豆腐
☆もだし(塩蔵)
☆岩ノリ
☆ねぎ
★醤油
★酒
【作り方】
①茹でたホタテを一度さらに取り、ゆで汁を酒・醤油で味を調える
②塩出ししたもだしを煮て、豆腐を加える。
③お椀にほたてを盛り付け、②をかけ、岩ノリ、お好みでねぎを加える。
きりあえ
「きりあえ」
黒川能に欠かせない一品のひとつ。赤こごみ・くるみ・青豆を細かく刻んだもの。王祇祭ではこのきりあえは春日神社の社紋「六つ目結の紋」の形に盛り付けされるのも大きな特徴。祭の際は、女性たちが集まってなんと乾燥の赤こごみ4KG分のきりあえを作るのだそうです。
【材料】
☆乾燥赤こごみ
☆くるみ
☆乾燥青豆
【作り方】
①赤こごみは2日前から戻す。
②青豆は一晩戻し、茹でて皮を取り除く。
③くるみ・青豆を細かく刻む
④赤こごみを細かく刻み、さらしで絞り、水分をしっかり取り除く。
⑤上座は味噌、下座は醤油・酒で味を調える。
当屋豆腐(左:下座。二番をかけたもの。 右:上座。これに岩ノリ・くるみなどが入った二番を付けて食べる)
「当屋豆腐」
黒川能に欠かせないもう一品。別名「豆腐祭」ともいわれる王祇祭では5俵(300KG) 分の大豆を仕込み、豆腐を作り、焼いて凍らせたものを使用します。きりあえと同様、上座と下座でつけ汁(二番汁という)の味付けが大きく違うのが特徴。
【材料】
☆当屋豆腐 (味噌で煮たもの)
☆ごぼう 15㎝に切りそろえたものを塩茹でする
(上座 二番汁)
醤油・にごり酒を火にかけ、沸騰したら火を止め冷めたら、刻んだくるみ・岩ノリ・山椒を加える。
冷たいつけだれとして熱々の豆腐とごぼうをつけて食べる
(下座 二番汁)
醤油と水を火にかけ、沸騰したら火を止めすぐに酒を入れ山椒を加える。冷たい豆腐とごぼうに熱々の二番汁をかけ入れて食べる。