鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.038 〜羽黒緬羊(はぐろめんよう)〜
 
羽黒緬羊農家 丸山光平さん(鶴岡市羽黒)

食肉と言うと、牛・豚・鶏がまず頭に浮かぶ人が多いかもしれませんが、羽黒では自慢の羊も育てています。鶴岡市羽黒庁舎のほど近く、月山高原花沢ファームの羊舎があります。コンパクトな羊舎では、黒い顔の羊たちが元気に歩き回っていました。

羊たちと丸山さん

敷地内には素敵なウッドデッキがあり、今回はそちらでお話をお聞きしました。
  
丸山さんのところで羊を飼い始めたのは、昭和50年代頃だそうで、それまでも、馬や牛などを育てていました。20歳ころまでは、田んぼの仕事は馬の手綱を引いてやっていた記憶があるそうです。当時は周りにも、馬や牛や羊を飼う家はたくさんありました。現在では、庄内で食肉用に羊を育てているところは丸山さんのところとあわせても2軒ほどしかないので、知っている人でないと地元の人でもなかなか口にする機会は少ないかもしれません。



人に近づいてくる羊たち

飼育サイクルはほぼ一年で、1月から5月が繁殖期。おなかの中で5ヵ月かけて大きくなった子羊は、温かく育てやすい時期に生まれてきます。1年から2年、飼育され大きくなった羊は、肉として出荷されていきます。日本には、羊肉の年齢による規格は特に設けられていませんが、若い順に西洋式のミルクラム・ラム・フォゲット・マトンに分けられる場合が多く、丸山さんのところではおおむねフォゲットに当てはまる段階で出荷しています。
 
 
羊肉は人によって段階の好みが分かれますが、フォゲットは、羊肉のうまみがありながら、食べやすいさっぱりした肉質を楽しむことができ、色々な人の舌にあう時期でもあります。 この羽黒で育てられた質のいい羊肉をブランドにしていこうと言う思いで羽黒緬羊と名付けたのは、地元のお肉屋さんと奥田シェフでした。


羊舎の外にも放牧されています

「アル・ケッチァーノの奥田シェフが羽黒緬羊の良さを紹介してくれたのがありがたい。」丸山さんは言います。
  
あるイベントで出したお肉を食べた方が奥田シェフに紹介して下さったのが縁で、ご本人が直接丸山さんのところに来たのには大層驚いたそうです。丸山さんの羊は奥田シェフいち押しの食材の一つ。アル・ケッチァーノでは「丸山さんの羊のロースト」等のシンプルなメニューで提供しており、繊細な羊のうまみを存分に楽しめます。アル・ケッチァーノで出しているヤギのミルクのメニューのヤギも実は丸山さんのところで飼っているだだちゃ豆のさやを食べて育ったヤギです。肉質の良さ、動物たちの健康を考えて育てられ、上質の食材が生まれているのです。
  
丸山さんご本人も「厚めの羊肉を塩コショウで食べるのが一番うまい」といいます。羽黒緬羊を手に入れた方はぜひまずはシンプルな味付けでいただいてみてください。

ストレスがなるべくかからないように育てられる羊たち

ヤギもいました

現在、月山高原花沢ファームでは、サフォークと言う種類の羊を子どもを産む母羊80頭、出荷用の羊120頭を飼っています。
現在の羊舎は、昭和55年に元々柿畑だったところを切り開いて建てたもので、最初は10頭前後からのスタートでした。
  
 
 
羊舎のあるところは木々に囲まれた小高い丘になっており、風通しがよく乾燥していて、羊たちはのびのびと育つことができます。臆病なところもある羊ですが、夏場も心地よいストレスがかからない環境で育てられていて、肉質よく出来上がります。
また、母羊たちは夏の間、月山高原の牧場で放牧されています。羊は暑さが苦手。月山高原は夏場でも涼しく、広々とした牧場で走り回り、しっかり運動することで、健康な子羊を産む体をつくる事ができます。

牧場を走り回る羊

だだちゃ豆のさやでおいしく元気に!
 
また、丸山さんの羊の自慢の一つに、だだちゃ豆のさやを食べさせていることがあります。
 
はじめは、加工に使用した豆のさやの行き場に困っているという話から、餌代が浮くかという思いからだったそうですが、羊たちも好んで食べ、肉質の向上にもつながったという偶然が見事にいい方向に重なったのだそうです。
 
羊たちにはとうもろこしや穀物、山の畑の牧草を刈って乾燥させたものも与えていますが、だだちゃ豆のさやをあげると、むしゃむしゃと喜んで食べるそうです。保存しており、冬の間も食べられるようにしてあります。
 
だだちゃ豆にはうまみ成分のアミノ酸や妊婦さんに欠かせない栄養素の葉酸、ストレスをおさえてくれるGABAが多いなど、様々な栄養素が含まれていると言われているので、だだちゃ豆のさやを食べ、羊たちはますます健康に育つことができているのではないでしょうか。

丸山さんは、羊以外にも米農家もやっていますが、毎朝夕には、羊たちに餌をやり、健康状態をみまわっています。羊にまつわる仕事の中で、いいな、と思うところは何ですか、とお聞きしたところ、「餌を時間になって羊がいるところに入れると、集まってきてみんなしてむしゃむしゃ食べてるところがかわいいんだよなぁ」と、にっこり。「それと、子ども産んで、10~20分でぴんぴん立って親のお乳を探して飲んでるところもかわいいな。」 食べることも、子どもがすぐに立つことも、健康のしるしです。丸山さんは、愛情のあるまなざしで羊たちと向き合っているんだな、と感じました。


色々な人が関わり合い仕事をしている

牧草作業をする洋充さん

  月山高原花沢ファームで働き始めて4年目になる丸山洋充さんに案内してもらい、牧草集めの作業も見せていただきました。
  
洋充さんは、4年目になり多くの仕事を任されています。まったく日陰のない畑で、機械のメンテナンスをしたあとに、乗り込み、すごいスピードで牧草を集めていく洋充さん。羊の仕事についてもお聞きしたところ、羊の毛の刈取り作業の話になりました。
「去年まで20分か30分かかっていたけど、今年は半分くらいのスピードで刈れるようになったんですよ。」丁寧さとスピードが必要な刈り取り作業。きっと年数を重ねるたびに羊のことがわかってきて、作業がスムーズになっているに違いありません。
「僕らが子供の時は地域のおまつりなんかでしょっちゅう地元の羊を食べていた記憶がある」と、羽黒出身の洋充さんは言います。
  
丸山さんの息子さんもファームで一緒に働き始めて2年。
現在は、3人で仕事をまわしています。羽黒緬羊は親子のつながりだけでなく、羊をやりたい!と言う思いのつながりの中でで育まれていました。
 
 
(文・写真:稲田瑛乃)


羽黒緬羊
(はぐろめんよう)

鶴岡産のだだちゃ豆のさやを食べ、月山高原でのびのび育った羊。
月山高原花沢ファーム代表の丸山さんは、おいしい羊肉を全国に届けるため羊にストレスをかけない生育環境づくりに徹底して取り組んでいます。

食べられる場所
アル・ケッチァーノ
月山高原牧場ふれあいハウス
 
ほか

入手できる場所 クックミートマルヤマ
〒997-0046
山形県鶴岡市みどり町20-35?
TEL:(0235)23-5246
※入荷数に限りがありますのでご了承ください  

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