鶴岡の食文化を紡ぐ人々

No.065  由良アナゴ 

 甚盛丸 田村 伊佐男さん

 
 
 鶴岡の居酒屋でよく見かける「由良アナゴ」を食べたことがありますか?30年以上この由良で「由良アナゴ」漁をしている田村伊佐男(72歳)さんにお話を伺いました。



由良アナゴ 甚盛丸 田村 伊佐男さん

由良アナゴの正体は・・・

 この「由良アナゴ」はアナゴといっても正式名称を「キタクロヌタウナギ」といい、アナゴではなく、味・食感もアナゴには似ていません。ぶつ切りにして焼くとコリコリとした食感と弾力、皮目の香ばしさにこってりとしたコクのある旨味で栄養価も高く、7~9月頃にしか味わえない庄内の希少な夏のスタミナ食としても人気があります。

キタクロウナギ

 午前4時、まだ薄暗いうちに由良港から出航し、1時間ほどかけて9マイル(14.4キロ)ほど沖に出ます。作業は1時間程度。帰りも1時間かけて戻ってくるので、トータル3時間の漁となります。午前7時過ぎに港に戻ってきたという田村さんが、早速冷蔵庫の中の獲ってきたばかりの「由良アナゴ」を見せてくれました。ゼリー状の粘液を分泌し、全身がルヌルとしたニョロッとしたものが桶いっぱいに入っている様子は衝撃的です。この日はお天気が悪く干す作業ができなかったので、天気が良い翌日に再度伺いました。

朝日浴びサングラス姿の田村さん

 朝日を浴びてサングラスをかけ、海の男の雰囲気を纏った田村さんが現れました。


 漁は、筒に餌を入れ、30m間隔に縄で100個ほど連結し、海に沈めます。餌は、カツオやサバを1筒に1切れ入れます。餌をサンマやアジでも行ったことがあるそうですが、餌を食べた「由良アナゴ」に細い骨が残ると食べ辛いことがわかりました。さらに「由良アナゴ」は餌でアナゴの色が変わり、赤い魚と白身ののときとアナゴの色違うのだと田村さんは教えてくれました。



漁に使う筒や縄

 海に筒を沈めてから、1~2日後に回収しに行くと、一度の漁で300400匹程獲れるそうです。港に戻りお天気を見ながら、朝45時に起きて1匹ずつ手で洗い、8~10匹ずつ竹櫛に通して干して、「由良アナゴ」の体内の粘液を絞り出します。漁より漁から戻ってきてからの作業が大変なのです。
 『「由良アナゴ」は年々沖に漁場が移ってるんだども、その理由はわからないけど、水温の関係もあるのかもしれない』と田村さんは言います。

天日干しされる由良アナゴ

天日干しされる由良アナゴ

 朝干した由良穴子は乾いたら串刺しのまま、居酒屋等に出荷します。これだけ、手間のかかる「由良アナゴ」は高値で取引されます。しかし、餌代と船の燃料代が高いために儲けはほとんどなく、その理由もあり漁をする人がなかなかいないのが現状です。

堀旅館のご主人と

  ここ由良ではほり旅館さんで由良穴子の料理を提供しています。「お客さんは好きか苦手か二つに分かれるなぁ」とほり旅館のご主人は言います。「食べ方は焼くだけです。炭火で焼いたらさらに美味しく、焼きたてを大根おろしと醤油でいただくのがお勧めです。」
 田村さんは甚盛丸の船長として、「由良アナゴ」漁には毎年30回ほど出ていましたが、令和2年度は20回ほどだといいます。「由良アナゴ」漁の他には、2月は刺し網でヒラメ、マガレイ。5月にはメバル、タラ漁を行い、その他に釣り船を出しています。

甚盛丸

 由良アナゴ」漁は現在、田村さんの他に堅苔沢に1名、小岩川に1名。それぞれ40代と50代の人がいます。田村さんの父親は、刺し網漁をしていましたが、田村さんが40歳の頃に「由良アナゴ」漁をしていた長老の方がやめるというのを知り、自分が「由良アナゴ漁」を引き継ぐことに決めました。以前は一人で漁に出ていましたが、今は一人では不安があるため、友人を乗せて沖に出ています。現在は、やれるだけ「由良アナゴ」漁を続けたいと笑顔で話してくれました。

 

鮮魚店に並ぶ由良アナゴ


後日、市内の鮮魚店に「由良アナゴ」が並んでいました。「好きな人は好きで入荷すると喜んで買っていくなやの」とお店がおっしゃっていました。

 

             (令和2831日取材)

由良アナゴ(キタクロウナギ)

 由良でとれる「由良アナゴ」は秋田県近海で獲れる「棒アナゴ」と一緒で、これまで「クロヌタウナギ」だと思われてきましたが、平成31331日付の研究論文で「キタクロウナギ」であると発表されています。

 体長は3050cm。顎も骨もなく、厳密にいえば魚類ではありません。深海に生息しているため眼は退化しているが、獲物を感知すると周りの海水を一瞬にして粘性にし、敵の身動きが取れなくなったところを捕食するという変わった性質を持っています。

 
 

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