鶴岡
食のミュージアム

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食文化を紡ぐ人々 No.050 加工蔵まや 伊藤ヒサエさん

 
 

日本には様々な行事がありますが、5月5日の端午の節句は知らない人はいない有名な暦の一つです。現在は5月5日になっていますが、旧暦で祝う地域もあるようです。そのような行事では、暦に合わせた食をいただきます。端午の節句では、山形県では“笹巻”を並べるのが一般的です。今回は笹巻について旧朝日村の山間の集落、倉沢にある加工蔵まやの伊藤ヒサエさんにお話をお聞きしました。

伊藤ヒサエさん

山の暮らしと加工所

倉沢は33世帯、人口127名(H27統計)の集落で、多くの人が農業をしながら、兼業で働く人のほか、狩猟免許を持っている方も多く、狩猟採集の山の恵みを活かして暮らしています。摩耶山への倉沢登山口からの道は鎖場があるような上級者向けのところもあり、倉沢から摩耶山を越えると、温海地域の越沢や関川に下りることができます。
加工蔵まやは、その摩耶山から名前を付けた小さな加工所です。ここでは笹巻のほか赤飯やおこわ、米粉パン、とちあられなどを加工・販売しています。

小さな加工所だが色々な設備がそろっている

「これが、あく水に漬けたもち米だよ。」とヒサエさんは黄色く染まったもち米をみせてくれました。
あく水は、ナラの灰でつくります。今は、山間の地域とはいえ薪ストーブを使う家も少ないため、薪ストーブのある家から灰を譲ってもらっています。ナラの灰を約2時間水で煮て、10日間ほど静かに置いておき、灰が沈殿するので上澄み液を取り出して、ガーゼで濃し、一升瓶で保管しておきます。注文が入ればこのあく水に4日間以上つけておきます。ここできちんと時間を取ることで、芯までしっかりとしみこみ、全体に黄色い色が入ります。つけている間は、まんべんなく行きわたるようできるだけ何度もかき混ぜます。

「巻いてみせたほうがいいかい?これはいぐさ、畳屋さんから新しいやつを買ってくるんだ。笹は土用の間にだけ採るんだ、それをきちっと乾かして。一度乾燥させた笹じゃないと香りが出ないんだよ。それを水でもどして準備しておくの。」ヒサエさんは口も手も両方動かしながら手際よくクルクルと笹まきを作っていきます。

あく水につけたもち米

「この辺(倉沢)は三角巻だけど、うちはこぶし巻。教えてくれたのが大鳥のお姉さんだから。大鳥はこぶし巻なんだよ。三角巻も習ったけど、わたしの手が合うのがこっち(こぶし巻)だったんだね。」

笹巻の形も地域によって違いがあります。庄内地方は三角巻とこぶし巻、北庄内は竹の子巻という円錐状の形があります。また、県内全体でみると、三角巻とこぶし巻に加え、置賜地方では新潟の笹団子のようなつの巻、村山地方では四角く包んだなた巻など、違いを見ても面白いです。ヒサエさんのこぶし巻では2升の餅で、大体150個の笹巻ができます。

こぶし巻の笹巻

完成した笹巻は、真水で煮ます。具合を見ながら煮ていくのですが、いい灰につけておいた時は、2時間くらいで完成するのですが、灰がよくないと10時間もかかったことがあるそうです。

笹巻の話を聞きながら、手を休めないヒサエさん。ぜんまいをもんだり、とちあられになる“かた餅”を見せてくれたり、6月にあるタキタロウ祭りの話や、山クルミを拾ってくる話、酒田の傘福づくりなど、なんていろんなことをやっているんだ!と驚くことばかりです。

商品には食文化創造都市ののシールを張っている

そんなヒサエさんですが、実は出身は神奈川で倉沢に来たのは約20年前。実家はお寿司屋さんで、40代で倉沢の伊藤家にお嫁に来ました。櫛引には一回り年の離れた実のお姉さんがお嫁さんに来ていたので、小さいころから鶴岡にはよく来ていたそう。山は好きで、来るたびに月山に登ったり、親しみのある場所でした。元々神奈川にいたころは事務職をしていたそうですが、手先が器用で好奇心旺盛なヒサエさんは、鶴岡に来てからご主人が作るお米や、身近な材料を使って加工品を作り、産直で販売することをスタート。米粉パンをつくるところからはじめたそうです。

親兄弟が飲食関係の仕事をしているから、加工品に関わるのは自然な流れだった、と言います。加工所があれば他にもできることがある、ということで、お米にまつわる加工品作りにいろいろチャレンジして、現在も続けています。

手際よく笹巻ができていく

家族で役割分担の暮らし

現在ヒサエさんは惣菜づくりや笹巻・赤飯など作りながら、クルミ拾いや野菜作りをしています。また、息子さんの孝紀さんは山菜など狩猟採集をしながら、アスパラ栽培をしています。同時に農家や食肉業社などで加工食品や流通にまつわるノウハウを働きながら学んでいるところだといいます。パン部門を担っているのも孝紀さん。ご主人は米作りと山菜採りです。

ヒサエさんは「お兄ちゃん(孝紀さん)は親の出した看板を子どもがなくしてはいけない、と言う気持ちがあるみたいでがんばっているよ。看板を持つと、自分で年間通じて収入のことを考えないといけないから、いつも手を動かしているようになるね。私は、手先を使うことは好きだからいろいろやることはあるけど倉沢での暮らしで嫌だと思ったことはないよ。いくつになっても好奇心旺盛なのかもしれない。諦めないでやることが続けていく秘訣だね。」と笑います。
役割分担をしながら暮らしを作っている伊藤ヒサエさん一家。家での生産物や、得意なことを組み合わせていろんなことにチャレンジしています。

ゼンマイをもむ

とちあられの元になるかた餅

~編集後記~


ヒサエさんたちが都会から引っ越してきたころ孝紀さんはまだ8歳と小さかったため、ヒサエさんは平気でしたが孝紀さんは暮らしの違いに戸惑いもあったそうです。山の人は一年中ずーっと何かをしていて働き者です。ヒサエさんが楽しみながら工夫して生活しているところをみながら、きっと孝紀さんも自分らしい山里の暮らし方を探していくのだろうな、お話を聞きながら感じました。


(文・写真:稲田瑛乃)

笹巻

日本各地にみられる、特に端午の節句に行事の食として用いられる笹でまかれたもち米を煮たものであるが、南庄内では灰を混ぜて煮たあく水にもち米を浸しておき、それを笹で三角形に包むことが特徴。黄色く飴色で、プルプルとした食感をしている。黒みつきなこや砂糖きなこをつけて食べる。
加工蔵まや
〒997-0624
山形県鶴岡市倉沢字上ノ山口六
TEL:090-7567-1642

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