鶴岡
食のミュージアム

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食文化を紡ぐ人々 No.046 鶴岡市堅苔沢 小堅保育園のみなさん

 
 

在来作物の一つである波渡(はと)なすは、これまで、地域の住民によって当たり前に育てられていましたが、一般的にはあまり知られていませんでした。地域の保育園での活動の中で地域外の方の目にとまり、在来野菜として注目されるようになった作物です。 今回は、波渡なすを取り巻く人たちのお話をご紹介します。

小堅保育園のみなさん

2015年に在来作物として確認された

鶴岡市の海岸沿いの地区、堅苔沢一帯で波渡なすは代々種を受け継ぎ育てられていたのですが、自家用に栽培・採種されるのみで、市場には流通していませんでした。新たな在来作物の一つとして確認されたのは2015年の9月頃。堅苔沢にある小堅保育園で食育活動に協力している鶴岡市在住の食育インストラクターの海藤道子さんが、地域の方から「おらいのナスんめさげ」と分けていただいたのがきっかけでした。よく聞くと波渡なすと呼ばれ現在も毎年採種しており、在来作物に詳しい山形大学農学部の江頭教授にも確認したところ、在来の品種の一つであることがわかりました。波渡なすは丸くて大きいのが特徴。

包丁を使って料理

海と山に近い小堅保育園は体験活動に力を入れていて、食育の行事の時には、子どもたちも包丁を持って材料を切ったりするなど、自分たちでなんでもできるように場をつくっています。波渡なすが地域に残っている在来種のなすだということがわかった翌春の2016年から、小堅保育園の子ども達が地域のおばあさんたちに話を聞きながら波渡なすを育てる“波渡なすチャレンジ”が始まりました

園庭内の真ん中になすの場所があります

「年長さんを中心に、3月31日に地域のおばあちゃんたちとはじめて顔合わせをしたんです。そこから、やり方をその都度聞きながら、育てていきました。」とお話しして下さったのは、同保育園の土岐邦子園長。「地域のお年寄りから種を分けていただき、話を聞きながらまずやってみたんです。子どもたちには自分の育った地域の在来作物に興味を持ってもらいたいし、地域と保育園の交流の場になればという思いもありました。」
“人肌で種を温めてから種をまく”という地域の言い伝えがあります。年長さんが手縫いして作ったのポシェットに湿らせたガーゼと土をまぶした種を数粒ずつ入れてもらい、人肌になるよう肌着の中にしまって、お腹であたため、芽だしをしました。子どもたちにどんな芽だったの?と聞くと、「1週間くらいで出たんだよ」「白くて小さい芽」「かわいいのが出てきたの」と教えてくれます。「おなかに入れてお母さんみたいにしたんだよ」と大事に育てた種から芽が出た時は、教えてくれたおばあちゃんの家まで見せに行ったほど、みんなうれしそうで目を輝かせて喜んでいたそうです。

重さを測る子どもたちと土岐先生

おばあちゃんたちに聞きながら育てる

芽が少し大きくなると、他の草も土から生えてきて、子ども達はどれがなすの芽かわからなくなったこともありました。そのときもまた、おばあちゃんたちのところに出向き、話を聞いて「葉っぱのとがっているのがなすだよ」と教えてもらいました。
大きくなっていくにつれ、植え替えや定植をし、8月には初収穫を迎えました。名札を付けて、大きくなった苗をみせながら「これがぼくの苗!」と子どもたちは教えてくれます。「朝来ると、まず水やりが日課になった。先生に言われなくても自発的にやるし、やっていない子がいると声をかけたり、みんなすごく大事になすを育てています。」と園長先生。今年、小堅保育園では園庭を改築したのですが、その時に、なすを定植する場所をまんなかに作りました。子どもたちに案内してもらうと「はとなすだからハートの形してるの」と紹介してくれました。

教えてもらいながらの収穫

波渡なすは、大きくて丸いのが特徴。切ったら白く身がしっかりつまっています。「ほかのなすとくらべても、大きくなってからでも実の中に種ができないのがいいとこだなやの。味噌とシソで炒めて食べるのが一番多い。」とおばあちゃん先生の一人が教えてくれました。味噌とシソで甘めの味つけをする“なべやき”は、鶴岡の家庭料理の一つです。波渡なすは、皮がしっかりしていて白い身の部分が多く火を入れて甘くとろりとした食感になり、なべやきにぴったりです。

みんなで揃っていただきまーす

みんなで波渡なす収穫祭!

収穫記念写真です!

9月に開催した収穫祭では、地域のお年寄りを呼んで、海藤さんと子どもたちが波渡なすづくし料理をテーブルいっぱいに並べました。子どもたちは手に持ちきれないほどの大きいなすを、一生懸命はさみで収穫しました。へたの部分を指さしながら、「ここ触って。針あるの。大人になったしょうこだよ」と収穫したばかりのなすを得意げに見せてくれました。「みんな育てるのじょんずで」とおばあちゃんたちもとてもうれしそう。子どもたちが包丁でぴかぴかのなすを切るのをながめながら、目を細めます。

収穫祭では発表会もしました

収穫祭が終わって最後ではありません。来年もまた、波渡なすが食べられるように、種取り用で残していたなすから種を取る方法をこれからおばあちゃんたちに教えてもらいます。こうして波渡なすは子どもたちも巻き込みながら、小さく、だけど大切に種を引い継がれていきます。

(文・写真:稲田瑛乃)

波渡なす

加賀野菜の「へた紫ナス」に似た丸みのある大型のナス。堅苔沢地区一帯で自家用に栽培・採取され、市場には流通していない。2015年になって在来作物と分かった。

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