鶴岡
食のミュージアム

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食文化を紡ぐ人々 No.041 鶴岡市一霞 農事組合法人一霞温海かぶ生産組合 組合長 佐々木茂さん

 
 

鶴岡の漬物と言えば必ず話題に上るのが、色も鮮やかで歯ごたえが自慢の在来作物、温海かぶ。今回は、温海地域の一霞集落が地域ぐるみで温海かぶの生産・加工・ブランド化に取り組む中心を担う一霞温海かぶ生産組合の組合長、佐々木茂さんに話を伺いました。

一霞で受け継がれてきた伝統の焼畑

一霞集落は、温海地域ほぼ中心に位置し、戸数26戸、人口87人(平成26年3月末現在)が暮らす中山間地域の集落です。伝統農法である焼畑による温海かぶの栽培が行われていて、400年以上の歴史があるそうです。

加工所は、昭和59年に設立しました。地域の特産物である温海かぶを多くの人に味わってもらいたいという思い、また、冬場の地域内での仕事の場としての施設があれば、ということもあり、一霞地域の基盤整備に合わせて建てられました。時代の変遷とともに、農林業中心の地域は方法を変えながら一次産業に取り組んでいく必要が出てきました。一霞地域でも、焼畑を維持していくための後継者や技術継承などの問題にも直面し、地域ぐるみでの課題解決に取り組んできたのだそうです。

道沿いにわかりやすい看板がある

試行錯誤で生まれた現在の甘酢漬

故郷の味として、また、百貨店での物産展でも販売し、全国から問い合わせのある大人気の一霞の温海かぶ漬ですが、現在のつけ方は約20年前からの方法で、それまで試行錯誤の繰り返しがありました。一霞の温海かぶ漬は、保存料などを使用せず塩と砂糖と酢のみで漬けています。加工所が設立してから約10年間は、個人宅での漬け方の「一回漬」と呼ばれる方法で加工していました。さっぱりとした味わいが好きな人も多いのですが、このやり方だと発酵が進みやすく、ガスが発生するため輸送や保管の問題があるため、独自の二回漬でコクのある現在の方法になったのだそうです。

漬け樽いっぱいのカブ

ちなみに、甘酢漬けという漬け方も温海かぶ漬の歴史から見ると近年のもので、それまでは味噌と塩、柿の皮と実を合わせて漬け込む「アバ漬け」が一般的でした。アバというのは、お母さんという意味で、行商の女性を呼ぶ言葉としても使われている庄内弁です。このアバ漬は、いかにも田舎の家庭の味、というような、複雑な味わいで、見た目も茶色っぽいものです。現在は作っているところもないということなのですが、その幻の味を復活させたいと、2015年には「鶴岡食文化女性リポーター」たちが作業を手伝いながら、埋もれつつあるみそ漬け文化の再発掘ということで取り上げたこともあります(この時は温海かぶではなく藤沢かぶを使用)。

加工所を案内してもらいながら、工程をお聞きしました。

最盛期には保管庫が桶でいっぱいになる

加工所には大きな桶があり、一つにはコンテナ65個分のカブがたっぷり入ります。重さにして1,300kg。ここに、2,000kgの重しをかけ、一度天地返し、塩漬けにします。これが一度目の漬け行程になります。その後、塩・砂糖・酢を入れた漬け液に漬けこみ、真空パックして製品にします。

また、組合では、カブの葉のパウダーづくりに取り組んでみたり、施設は冬季のみ使用のため、夏場の胡瓜漬などにも取り組んだりしましたが、かぶ漬けに香りがうつってしまうことや、コスト面などから、現在ははかぶ漬だけを商品として供給しています。

「ほかにも何がねが、と、かぶら漬け注文してくれだお客様から注文が入っだこどもある。悩みでもあるんども、かぶ漬けは本当に敏感だがらの。」と話す佐々木さんからカブへの愛が伝わってきます。

一霞産の余計な根が出ていない一本根のカブ

一霞の温海かぶ漬けは、厳選された温海の生産者からの温海かぶのみを使用しています。


「いいやつはこれ、斜面で作ったら根っこはまんなかの一本がツーとなっで、余計な根っこが出ない。ほんどなはふどいやつでしっかり根をはる。よそのやつは根っこ見れば脇からこまこい根がででるから違いわがるなだ。」


長年かぶと付き合っているからわかる

配送を待つかぶ漬

焼き畑の作業は、7月下旬から始まります。畑になる山の急斜面で、木を刈り払い、約1週間乾かして、お盆前には火入れをします。火入れ前にはよく乾燥させるため、雨の降らない時を見計らいます。焼いてすぐまだ地面が熱いうちに温海かぶの種子を蒔きます。灰が「ペタッとする(焼いたばかりの畑地では、灰がふんわりしていて、その後朝露や雨の湿度で地面にくっつくようになることをペタッとする、と表現されていました。)」前に種をまき、すぐ後にさっと雨が降る日を狙います。
そうすることで、灰が種をおさえ、土の役割を果たします。1ヵ月もしないうちに間引きをします。家によって回数は違うのだそうですが、佐々木さんは間引き1回派。あんまり畑に踏み入れたくないのがその理由で、そうするためには種をまく時点で薄くまく熟練の技術が必要になります。
焼畑をする斜面の雑草地は、5年に一度くらいでまわしていくのが土が肥えてくるサイクルなので理想的です。昔は、杉を伐採してかぶ、その後ダイコンやそばや雑穀をつくり、また杉を植えるというサイクルでしたが、かぶの生産を中心に置いているので、やり方は変わっています。杉の林と草地では、できてくるかぶの様子は違うのかお聞きしたところ、「やっぱり違うの。杉の切った後を焼き畑にすると、土がフカフカて栄養がありすぎて根っこ長くなるがら、色が白みがいっぱいある。色があざやがでないわけ。」と佐々木さんはおっしゃっていました。

色鮮やかなかぶ漬

これから目指していくものは

10月の初めころから雪が降るまで収穫は続きます。それに合わせて10月中旬頃から6人~7人で運営している加工所も忙しくなります。漬けるのに合わせて、注文の対応でてんてこ舞いになるけれども、仕事自体は楽しい、と一緒に働く女性も話しています。彼女は一霞の出身で、一度は外に転出したのですが、戻ってきたのが縁で加工所の仕事を手伝っています。取材日は最盛期ではない時期に行ったのですが、注文の電話受付やカブ漬けのパッキングなどの作業を一人でやっている姿が印象的でした。

一つ一つ丁寧に根をとっている

「若いひどはみんな会社勤めだがらの。どうしでも。だども、色々なこどもしでみでの。特産の山菜とがの。かぶらばりでなく。」

ほかの農林水産業と同じ問題をやはりここも抱えていて、地域内での後継者不足が心配の種だとおっしゃっていました。しかしながらそれだけではなく、山の恵みの山菜などにも注目していきたいと、佐々木さんは語ります。一霞地域は、戸数26軒の小さな中山間集落です。家族みたいなつながりの中で、一霞を愛しながらその変化を見つめ、一霞らしいむらづくりにゆるやかに進んでいくやわらかさを佐々木さんの言葉の端々から感じることができました。

「5月頃だば、かぶらの菜の花畑が一面できれいだからみに来ばいい。」
そう言って見送ってくださったので、暖かくなったら仲間を連れてまたここに来なくては、と強く思いました。

(文・写真:稲田瑛乃)

焼畑カブ(温海カブ)漬け

花の時期:5月初旬~中旬
収穫時期:10月~雪が降るまで
かぶ漬けの時期:10月~3月頃(無くなるまで)

塩と砂糖と酢のみで味付けした自然食品。
鮮やかな色と、かぶの歯ごたえや味わいを存分に楽しんでください。

お問合せ

一霞温海かぶ生産組合

〒999-7203
山形県鶴岡市一霞字宮の前130-1
電話 0235-43-3201
FAX 0235-43-2802

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